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2学期終業式における校長講話(令和7年12月24日)

 皆さん、おはようございます。

 この終業式の後、写真部、社会福祉・介護検定、俳句などのさまざまな分野に加えて、球技大会の各学年1位についても、それぞれ表彰があります。

 そして、今日の表彰だけでなく、少し前、玉淀橋の上から飛び降りようとしていた人を救けたということで、1人の生徒が昨日、寄居警察から人命救助の感謝状を受けています。

 また、表彰はされていませんが、今学期、本校の生徒の中には、桜沢駅の階段のところで転んでしまった中学生の散乱した荷物を一緒に拾ってあげた人や、学校の前の県道で車道に出て歩いてしまっていた目の不自由な方に声をかけ、ガードレールの中に誘導してさしあげた人がいた、という話を聞いています。私は校長として、また、皆さんを知る一人の大人として、とても嬉しく、誇らしく思っています。

  

 12月が終わろうとしています。禅宗のお坊さんの言葉に「看(み)よ看(み)よ臘月(ろうげつ)尽(つ)く」…見なさい見なさい。お釈迦様が悟りを開いたという12月が終わってしまうよ。おまえは何をしているんだい、という、励ましの言葉があります。この一年何をしてきたかなあ、何ができたかなあと、私も思わず反省してしまいます。

 

 今日のお話は、一週間後にお正月を控えたクリスマスイブという楽しい時期のものとしては、あまりふさわしくない私事(わたくしごと)になりますが、どうかお許しください。

 今月、大学時代の男声合唱団で一緒に歌っていた2年下の後輩が、緩和ケア病棟に入院したと聞いて、お見舞に行ってきました。緩和ケアとは、治すための治療よりも、主に末期のがんなどによる痛みや苦痛を和らげ、患者さん本人と家族とが穏やかに過ごせるようにサポートしていただくような、そんなケアのことです。

 彼は、気配り上手で、親切で、明るく元気な人柄が皆に好かれていて、そこにいるだけで皆が楽しい気持ちになるような人だったので、学生時代からずっと人気者でした。お見舞のときにも、病室に来た看護師さんに「調子はどうですか?」と聞かれた彼は、かすれた声で、それでも、いたずらっ子のような笑顔で、「はい。お調子者です。」と答えていました。こんなときにまで私たちを笑わせて喜ばせようとしていました。私たちから「馬鹿野郎、おまえ、いつも看護師さんに迷惑かけてんじゃねえだろうな。」と言われた彼は、いい笑顔で「みなさん、本当に優しいんですよ。」と言っていました。

 

 さて、教員としてまだ若手だったころの私は、授業の技術を磨くことに一所懸命でした。そのころは「どんなに人柄が良いお医者さんでも、患者さんを治すための知識や技術がなければ、存在価値がない。教員も、生徒を成長させることができなければ、たとえ、いくらいい人であったとしても、駄目だ」と考えて、自分に足りないものを磨くのに、必死でした。

 しかし、国語の教員としての知識で言葉を飾り立てても、ちょっとした挨拶の言葉や、たった一言の「良かったね、おめでとう」とか「ありがとう」という言葉の方が大きく人の心を動かすのを経験したり、先ほど紹介した皆さんのような、また、表彰される人をいつも拍手で讃えてくれている皆さんのような、優しい心が表れた行いを見たりしているうちに、そんな頑(かたく)ななものの考え方は、ほどけてしまいました。

 そして、教頭として知的障がいをもつお子さんのための特別支援学校に勤めたときです。その学校の校長先生は、病弱なお子さんのための特別支援学校で長く働いた御経験のある方でした。その方から聞いた話です。

 多くのお子さんが、成人式を待たずに亡くなっていく。小学校の卒業式も経験せずに亡くなっていくお子さんもいる。そんなクラスの担任をするときに、「これは、将来役に立つよ」とか、「しっかり勉強しないと、大人になって苦労するよ」などという言葉は、意味がなくなる。その中で、自分の教員としての存在意義は何なのか、と悩んだ末の結論は、「自分は先生として、この子たちに、小学4年生なら4年生としての一日を、しっかり体験させてあげるんだ。勉強も宿題もある、なかよしもけんかもある普通の一日を、ちゃんと普通の一日として過ごさせてあげるんだ」ということだったそうです。

 私は、初めてクラス担任をしたときから、「いのちと時間ときまりを大切にしましょう」と言い続けてきましたが、その話を聞いたときに、本当の意味での大切さがわかったような気がしました。

 治す技術だけが大切なら、治らない病気と向き合う人をケアする医療の意味はどこにあるのか。将来に向けて成長させることだけが大切なら、今日を精一杯生きる子どもに、先生は何をすればよいのか。

 先ほど、話の最初に紹介したような、ささやかな親切を自然に行動できる人たちは、あのころの私よりも、ずっと、きちんと「いのちと時間ときまりの大切さ」がわかっているのだろうと思います。この寄居城北高校には、そんな、本当に大事なことをちゃんとわかっている人が、たくさんいる。とても素敵なことだと私は思っています。

 

 皆さん。令和7年と令和8年とをまたぐ、いのちをつなぐ冬休みです。休みの間に、本を読みましょう。何か良いことで、だれかのお手伝いをしましょう。どんな小さなことでもいいです。皆さんが、何かしら自分を誉めてあげられるような、そんなことを見つけて、この1年を締めくくれるよう、祈っています。

 3学期の始業式に、皆さんの元気な顔を見るのを楽しみにしています。どうぞ、良いお年を。