日誌

1学期始業式における校長講話(令和7年4月8日)

 皆さん、おはようございます。

 令和7年度が始まりました。世界的に学年の変わり目は夏休み明けが多く、4月を年度の始まりとするのは日本独特の習慣です。しかし、日本人がとりわけ愛している桜の季節が節目となるのは、結果的に美しい偶然となりました。

 皆さんも、さまざまな偶然によって、今、周りにいる人と同じクラスになったのでしょう。偶然の良き出会いを「邂逅」といいますが、この年度のはじめの出会い、邂逅を、大事に育てていってほしいと思います。

 出会いに必要なものといえば、挨拶です。挨拶は、人の心に近づき心を開くきっかけとなるものです。昨年度の自分よりも良い挨拶ができましたか。自分に問いかけてみてください。

 私はいつも皆さんに「いのちと、時間と、きまりを大切にしてほしい」という話をしていますが、挨拶は、「生きているあなたがそこにいるのを、私は尊重します」という意思表示でもあります。これも、いのちを大切にする行いの一つです。

 日本は、太平洋戦争とも呼ばれた第二次世界大戦の終結後、80年にわたって戦争の当事国にはならず、深刻ないのちの危険に直接さらされないまま、平和な生活が日常となっています。しかし、私の友人の娘さんはウクライナの方と結婚し、今もキーウに住んでいます。「グローバル社会」といわれる現代、遠い異国の戦争も、他人事ではありません。皆さんが、今も、これからも、自分のいのちや他人のいのちを尊重して生きていくために、ささやかでもいいですから、色々なことを考えて日々を過ごしてほしいと思います。

 さて、新2年生の皆さん。入学して1年が経ちました。今日の午後には入学式があります。新入生に対して、良き先輩として胸を張れる準備はできましたか。素敵な先輩らしくなれましたか。成長する努力が足りないまま先輩ぶる、というのは逆にみっともないですから、素直に謙虚に今の自分を見つめて、成長しようと努力する姿を後輩に見せてあげましょう。

 そして、新3年生の皆さん。立派な先輩になりましたね。これからは世の中に出ていく準備です。高校生活は残り1年ではありません。2月のほとんどは自宅研修、3月の登校日は3日間、今日は4月8日。そう考えると、皆さんに残された高校生としての時間は、10ヶ月を切りました。今の自分と残された時間とをしっかり見つめて、歩く道筋を考えてください。

 今は、高校生としてのきまりを大切にしながら過ごしてもらっていますが、社会人になると、世の中のルール、マナー、エチケットなどのきまりごとについては、学校と違って「まだ子どもなんだから」という教育的配慮がありません。きまりや仕組みに振り回されないよう、しっかり知って、学んで、生きて行けるようにしてください。

 2・3年生の皆さんのほとんどは、16歳か17歳です。今までの人生に対する割合でこの1年を私と比べて考えてみると、16分の1と62分の1ですから、私の1年は、皆さんの4倍近い速さで過ぎていったわけです。皆さんも、これから時間が過ぎるのをどんどん早く感じるようになります。高校生でいられる時間を大切にしてください。

 ところで、以前、皆さんに「学校は、わからなかったことがわかるようになるところ、できなかったことができるようになるところ、今までつながっていなかった人や知識や物事がつながるようになるところ」だという話をしました。そして、「だから、今はわからないことがあってもいい、できないことがあってもいい。わかろうとする努力、できるようになろうとする努力だけは、やめてはいけない。」ということも話しました。

 それでは、いつまでにわかるようにすればいいのか。いつまでにできるようにするのか。そのために何をすればよいのか。どういう計画を立てて実行すればよいのか。ぜひ、令和7年度のはじめにあたって、考えてみてください。そして、少しでもいいから行動に移してみてください。

 昔、「ありのままの」という歌が流行りましたが、ありのままの自分というのは尊いものです。しかし、ありのままの自分は、決して「今のままの自分」のことではありません。人はいくつになっても、何かしら向上し成長することができるものです。来年の3月の自分、5年後の自分、10年後の自分を考えて、その実現のために、明日の自分、今日の自分、今の自分は何をするべきなのか、考えて行動してください。

このお願いを、始業式における校長講話といたします。皆さんにとって令和7年度が素敵なものになりますよう祈っています。