日誌

令和6年度第1学期終業式における校長講話(令和6年7月19日)

 皆さん、おはようございます。リモートでの終業式となりますが、1学期の締めくくりにあたり、今日は、挨拶についての話、いのちと時間ときまりの話、夏休みに向けて皆さんにしてほしいことの、3つの話をします。

 まず、挨拶について。挨拶は漢字で書くと難しいですが、「アイ」の字も「サツ」の字も「人に近づく」という意味があります。挨拶は人と人との間を近くするものです。挨拶は、大事です。

 ヨーロッパやアメリカでは、挨拶そのものが「私は、あなたの敵ではない。あなたを傷つけるつもりはない。」という意思表示の意味を持つメッセージだ、と言う人もいます。

 20年近く前のことです。私が進路指導の仕事をしていたとき、ある企業の方から、ざっくばらんに次のようなことを言われました。

「そりゃ、勉強ができないよりできる方が良いけど、多少成績が悪くても、仕事はちゃんと教えるから、それをきちんと覚えてくれればいい。でもね、挨拶や返事がちゃんとできないのは、まずい。挨拶ができない人は、仕事を教えても覚えてくれないし、仕事仲間も、その人を助けてくれなくなっちゃう。」

ということでした。実話です。

 また、約30年前のことです。3年生の担任をしていた私は、求人票を学校に持ってきてくれた企業の方の対応をしたとき、こんなことを言われました。

「うちの会社の求人票には、この学校から1名採用予定と書いてあるけど、2人送ってください。さっき、近くの○○高校へ行ったとき、何人も生徒とすれ違ったのに誰も挨拶しないから、進路室まで行くのをやめて帰ってきちゃったんだよ。ここの生徒は、玄関のところでも渡り廊下でも、みんな、よく声出して挨拶してくれる。私の権限で、○○高校からの採用はやめます。その分、ここから1人余計に採ります。」

ということでした。これも実話です。その方にお礼を言いながら、私は心の中で、誰だかわからない生徒たちにもお礼を言いました。挨拶は、大事です。

 さて、私は、急ぎの仕事がない朝には、わずかな時間ですが校舎の前に立って、登校する皆さんを見ています。素敵な挨拶をしてくれる人も、そうでない人もいます。人には得意・不得意がありますし、個人の性格もありますから、いきなり上手に挨拶ができない人もいるでしょう。ただ、学校は、今はまだできないことを、できるようにするための場所です。挨拶するのが苦手な人は練習すればいいんです。私で練習してもらってもかまいません。挨拶は、漢字で書くと難しいですが、声に出してみると、案外やればできるものです。

 皆さん。どうか学校生活の中で、挨拶に限らず、できたりできなかったりを繰り返しながらでいいですから、何か良いものを身につけてくれると嬉しく思います。

 2つ目の話です。4月に初めて皆さんに話をしたときから、私は「いのち」と「時間」と「きまり」を大切にしてほしいと言い続けています。

 皆さんが成長するということは、皆さんの大切な「いのち」が、より良く伸びることです。だから、人の成長を邪魔する「いじめ」や「からかい」をしてはいけない。

 素晴らしい結果を出している人を見て、「あんなふうになりたいなあ、自分も頑張ろう」と高みを目指す人が美しく見えるのは、いのちをより良く伸ばそうとしているからです。 

 素晴らしい結果を出している人を見て、「あいつも失敗して、今のダメな自分と同じくらいのレベルに落ちればいいのに」と思うような人が醜く見えるのは、自分と他人と、両方のいのちのより良い成長を、邪魔しているからです。

 人間は弱いから、理想どおりにはいきませんが、3年後、5年後、10年後の自分から「あのとき、こちらの道を選んでくれて、ありがとう。」と言ってもらえるような行動を、自分で考えて選べるといいですね。

 私は、皆さんが高校生として過ごしている貴重な時間を、そんな成長のために使ってほしいと願っています。どうすればいいかわからないときは、目の前のやるべき課題に集中して取り組んでみてください。それが時間を大切にする第一歩だと、4月にも言いました。

 また、すべてのきまりには、それが作られた理由があります。きまりを破ることは、決して格好いいことではない。ルールやマナーなどのきまりごとを破ると、結局は、誰かを傷つけたり、自分が傷ついたり、不便になったり、損をしたりします。きまりごとの、その向こう側にある理由を、考えてみてください。夏休みは「自由な時間」が多いのですが、それは「勝手に過ごしていい時間」ではありません。考えて行動しましょう。「いのち」と「時間」と「きまり」を大切にしてください。

 最後の話は、夏休みに向けて、皆さんに実行してほしいことです。

 いつもより長い44日間の休みです。この休みの間に、どうか、一冊でも多く本を読んでください。字ばっかりの本を読む習慣のない人は、一冊でもいいから読んでください。

 そして、家でもどこでも、何かお手伝いをしましょう。お金をもらうのではなくて、良いことをして「ありがとう」という言葉を誰かにもらえるような、そんなお手伝いをしましょう。

 もし、一人で悩んで、もやもやした気持ちのまま8月が終わりそうになったら、学校の先生でもいいです。皆さんに配布した「夏季休業中の生活指導について」というプリントの裏にあるQRコードの相談先でもいいです。皆さんを煽(あお)ったり、嘘の情報で不安がらせたりする変なSNSのサイトなどにだまされないで、皆さんのことを大切に思っている相談相手、皆さんのことを守ろうとしている相談相手に、話をしてみてください。

 体に気を付けて、本を読んで、お手伝いをして、今日の終業式の日の自分よりも成長して、また、9月2日に、学校で元気な顔を見せてくれることを祈っています。